『新海誠』作品を振り返る

main

今年もたくさんの良い映画がありましたが、今年の後半の目玉はなんといっても『君の名は。』ですよね。様々なメディアで取りあげられ、アカデミー賞という声まで聞かれるようになりました。この作品、新海誠さんという方が監督をされているのですが、過去作にも素晴らしい作品が揃っています。

『君の名は。』をご覧になって驚いた方も多いと思いますが、アニメとは思えない実写のような映像のすばらしさはもちろんのこと、どの物語も何となく切ないストーリー展開に心打たれますよね。今回はそんな新海誠作品をいくつか振り返ってみたいと思います。

■君の名は。

t01a_169395

スタジオジブリのアニメ作品以外でこれほどまでに興行収入が高かった映画、そして老若男女問わず支持されたアニメーションは今までなかったのではないでしょうか?

ストーリーは遠くはなれた2人が夢の中で身体が入れ替わっていると思っていたら…現実の話だった!というところからスタートします。一方は岐阜の巫女さんの「三葉」、一方は東京の男子高校生「瀧」といった具合です。二人は男女の交換だけでなく、住んでいる地域の文化なども入れ替わりになるので、田舎町に暮す三葉にとってはあこがれの大都会東京の生活を満喫するだけでなく、入れ替わった瀧のバイト先での恋愛事情にまで詳しくなっていきます。

一方、田舎での仮暮らしを送る瀧は、三葉の神社の行事など伝統や歴史に根付いた文化に触れてゆきます。ここでは、小さなコミュニティならではの些細な軋轢などにも対峙することになります。お互いの置かれた環境をだんだん知ってゆく中で、若い男女が定期的に自分の身体を共有し合っていたら、自然と二人の距離は恋人よりも近い存在になっていくのではないでしょうか?

互いに秘めた気持ちを持ちつつも、言い出せない間柄。そして何よりも現実的な距離があるため2人はなかなか出会えません。瀧は一大決心をし、三葉の住む糸守町を訪ねてみるのだが…

まだ見られていない方もいると思いますので、ここからの核心に迫るような詳しい話は避けますが、大林宣彦監督の転校生の『男女入れ替わり』や時を駆ける少女の『タイムリープ』ような要素を強く感じました。

お互いの気持ちを知っているのになかなか言い出せないあだち充作品のようなもどかしさも合わさって、昭和世代の大人にもノスタルジーを感じさせる作品となって、幅広い層に受けているのかなと思いました。まだご覧になっていない方は、各劇場などでまだご覧になれますので、映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか?

■君の名は。
http://www.kiminona.com/index.html

 

■言の葉の庭

20130523-1632333

映画というには実に短い短編アニメーションです。新海作品が大ブレイクしたので、過去作を遡って見ている方も多くおられると思いますが、『君の名は。』との趣の違いに驚かれると思います。

新海作品のもうひとつの特徴に良くも悪くも『ムダな描写がない』という点が上げられると思います。この言の葉の庭も46分という実に短い作品となります。個人的にはこの内容なら2時間くらいの作品にしてほしかったなぁと思ってしまいます。

過去の新海作品は基本的にモノローグが多く、主人公目線、もしくは対象者の片方の目線で描かれていて、『君の名は。』のように2人の気持ちが交差するというシーンはあまり多くありません。この作品も恋愛というにはたどたどしい、片思いと言った方が良いようなそんな感情がどこか漂う作品が多いです。

言の葉の庭は、雨の降った日には朝一の授業はサボって、新宿御苑に行くというちょっと変わった高校生タカオのお話です。タカオは靴づくりが趣味で、雨の日はお決まりのベンチで靴のデッサンなど靴に関わった勉強をするのが楽しみだった。雨が降る朝、いつものように新宿御苑にいくと、ベンチにはお酒を片手に読書をする先客が。タカオは『どこか見覚えがあるな』と声をかけると、彼女(ユキノ)は「雷神(なるかみ)の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」 を言い残して去っていった。

季節も梅雨に入り、二人は会う機会が増え、味覚障害を患うユキノにお弁当を作るなど二人の距離は縮まってゆく。雨の日にだけ会える不思議な彼女ユキノにだんだんと惹かれてゆくタカオだが、梅雨の季節が終るとしばらく二人は会えなくなる。夏休みが終り、二人は会えないまま2学期の始業を迎えるとタカオは学校でユキノとすれ違う。ユキノが古文の教師だったこと、生徒の嫌がらせによって退職に追い込まれたことを知ることとなるが…

高校生と学校の先生という歳の差がある二人が惹かれ合ってゆく様、2人のギャップを埋められない少年ならではの無力感や、成人した大人の挫折感など重いテーマをしとしと降る雨が優しく包んでくれます。ちなみに二人の恋の行方は分かりませんが、ユキノさんは『君の名は。』に出てきますからね、注目です!

■言の葉の庭
http://www.kotonohanoniwa.jp/

 

■秒速5センチメートル

146686_01

『君の名は。』を見た方が次に見る作品といえば、きっとこちらなのではないでしょうか?ネットでは鬱映画(笑)との話題の今作ですが、鬱になるほど共感できるということなのではないでしょうか?

本作は3部作でそれぞれ『出会い』、『恋慕』、『追懐』といったような内容で、山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」の歌詞とも内容が共鳴して、作品をより赴き深いものにしています。

主人公の貴樹は小学校で初恋の相手、明里に出会います。二人は互いに心惹かれていましたが、明里が栃木に転校となります。ずっと一緒だよ、手紙も書いてねと二人は別れますが、中学に入りお互い勉強や部活で忙しくなると、連絡は途絶えがちになります。そんな中、今度は貴樹が鹿児島に転校することとなり、貴樹は『これきり会えなくなるのではないか』と思い、明里のいる栃木県の岩舟に会いにいく決心をします。

中学生一人で、携帯もない時代の2人の待ち合わせです。7時に明里の地元の駅で会う予定が、雪がこんこんと降り、電車はストップ。連絡を取りたくても実家に電話するわけにも行かず、明里がどこにいるかさえも分からない。もしも待っていてくれても、この雪の中。明里に何かあったら困ると、貴樹は「どうか家に帰っていてほしい」と願います。

日付が変わった深夜に目的地の岩舟に電車は止まります。そこで目にするのは明里の姿でした。雪の降りしきる中、夜通し貴樹を待っていてくれました。とてつもない不安から安堵に変わる貴樹は明里のお弁当にまた涙します。雪の中帰ることができなくなった二人は近くになった小屋で一晩を過ごします。でもそこは中学生、朝になったら家路につかねばなりません。もうここで別れたら明日からは栃木と鹿児島、中学生にとっては遠すぎる距離です。

電車に時間も迫り、最後に「貴樹くん、あなたは大丈夫。」と声を掛けられて二人は別れます。

どうでしょう、こんなドラマチックな恋愛を思春期にしてしまったら、貴樹君はその後どうなってしまうんでしょうか…

後は、ご想像にお任せしますが、新海作品の中でも一番心理描写に力の入っている作品だと思います。もちろん映像はすごいのですが、それ以上に主人公貴樹のこころのひだまで、写し取ったかの様な繊細な表現は、今の恋愛要らないと言っている草食系男子にも、ガツンと響くこと間違い無しの作品だと思います。是非ご覧あれ!

■秒速5センチメートル
http://www.cwfilms.jp/5cm/

コメントは受け付けていません。