7日から開催したアルゼンチン・オープン(アルゼンチン/ブエノスアイレス、レッドクレー、 ATP250)に怪我から約2年8カ月ぶりに復帰した元世界ランク3位のJ・M・デル=ポトロ。
強烈なサーブとフラットのビッグフォアを武器にビッグ4がグランドスラムを独占していた時代に唯一グランドスラムで優勝した選手です。時代が違えば世界一になれた偉大なプレイヤーです。膝や手首と相次ぐ故障に見舞われた彼は、その都度懸命なリハビリに耐えカムバックを遂げてきました。
とても身長が高い割にフットワークが優れているため、いいポジションに入って、得意のキャノン砲のようなフォアハンドを連発することで勝ち星を積み上げてきました。
20歳で全盛期のフェデラーに勝って全米を制した後に大怪我で離脱、通常はそこで選手生命が終わってしまう選手も多い中、9年後には再び全米の決勝に駒を進めます。その年はマスターズでも優勝し何と世界3位まで登り詰めます。それでもテニスはハードなスポーツ。連戦連戦で世界各地を飛び回るとまた古傷が痛み故障という繰り返し。
今回が約3年ぶりの復帰で33歳。正直なところ年齢的にも最後になってしまうのではないかとみられていましたが、結果は善戦惜しくも1-6,3-6のストレート負け。ただ、3年近くプロと試合していない中でツアーレベルの選手と惜しい試合を繰り広げられるのですからまだまだその大きな背中を見せてもらいたいものです。地元ということもあって、試合終盤には観客が総立ちとなり彼に向かって大きな声援を送ります。
サーブのカウントが進む中、デルポトロの目にも涙が溢れてきました。声援が次第に大きくなり、サーブのショットクロックは審判の粋な計らいでストップ。十分に声援を浴びたデルポトロは涙ながらに試合に戻ります。私もこれには涙が止まらなくなってしまいました。残念ながら負けてしまいましたが、彼にとって忘れられない復帰戦になったことでしょう。
試合前には
「会見を始める前に、しゃべりたいことがあるんだ。この日のために、多くの時間を費やし悩み、想像してきた。みんなが私の復帰を期待しているのはわかっている。これは復帰というより、お別れのあいさつになるかもしれない。続けたい気持ちもあるけれど、私のヒザは悪夢のような状態になっている。何年も前から、いろいろな医師とさまざまな治療を試してきた。でも、まだ解決策は見つかっていない。“さよなら”を言う機会もなく引退するなんて想像もしていなかったけど、それを告げるなら(地元の)ブエノスアイレスほどふさわしい大会はないと思う。数週間後、私の将来がどうなるかはわからないが、33歳の人間として、痛みなく生きていきたいという思いがある。難しい決断ではあるけれど、はっきりさせたかった」
と引退も示唆していましたが、試合後に出した声明では、一応少しお休みという判断らしいので、ぜひ復帰してまた得意のビッグフォアを見せて欲しいものです。