芝の季節、到来。

先日、テニスの4大大会の一つフレンチオープンが男子ラファエル・ナダル、女子はマリア・シャラポアの優勝で幕を閉じました。ただ、テニスと言って皆さんがまず思い浮かべるのはウインブルドンなのではないでしょうか?

それぐらい知名度も高く、格式高いウインブルドン。6月最終週の月曜日開幕といよいよオープンが迫ってまいりました。そこで、簡単なおさらいと期待のニューカマーのご紹介、優勝候補などをご紹介したいと思います。選手の事が少しでも分かるとゲームも数倍楽しくご覧頂けると思います!

それでは、まずウインブルドンのおさらいから初めてみましょう。The Championshipsと呼ばれる、全英オープンですが1877年からスタートした130年以上の歴史を持つ伝統と格式を持つ大会です。

服装はプレドミナントリー・ホワイトと呼ばれる白を基調とした衣裳規定があり、4大大会で唯一、グラス(芝)コートで行われる大会です。白のウエアは練習を行う際にも義務づけられており、さすがは紳士の国のスポーツと言った所。ほかの4大大会とは少し毛色が違います。

サーフェスの芝というのも今ではほとんど見られないセッティングで、特徴は跳ねないこと、そして早い球足などがあげられます。芝コートの国際試合はとても少なく、ドイツのハレで行われるゲリー・ウェバー・オープンとイーストボーンで行われるエイゴン国際ぐらいしか大きなテニス大会はありません。

この2つはウインブルドンの前の週に行われるので、ウインブルドンの調整大会として世界中から一流選手が集まります。ハレの大会にはフェデラーが毎年でる事で有名ですが、もう一つの大会エイゴン国際は特に注目の大会です。

冠スポンサーがエイゴンですが、以前はクイーンズと呼ばれ、ウインブルドンの優勝を占う上で欠かせない大会でした。クイーンズで勝った選手がウインブルドンでも勝つ、そんな大会なのです。今年もクイーンズに日本人が2人出場していますので是非この大会の模様もチェックしてみて下さい。

■エイゴン国際
http://www.lta.org.uk/fans-major-events/lta-summer-grass-court-events/aegon-international/

 

■錦織だけじゃない、日本の期待選手


テニスと言えば今日本では錦織圭選手が大注目されていますが、ほかにも日本選手は今世界で大活躍中なんです!ウインブルドンなど4大大会の本選ドロー(組み合わせ)は128。予選から上がってくる枠が16、主催者推薦などワイルドカードが4、そして残りの104ドローがランキング順位によって予選免除で参加できる数です。選手全員が参加するわけではないのですが、目安としてランキング100位以内に入れば本戦出場がほぼ確実です。

今まで日本人選手では松岡修造氏がベスト8になったときですら、ランキングは100位以下、ワイルドカードでの出場でした。

予選は全世界から集まった下部トーナメントで優勝するような選手ばかりの中、3ラウンドを勝ち抜くタフな試合を優勝しなくてはなりません。

ランキング100位は6月現在で約500ポイントほど。ナダルが出場するような、ジャパンオープンでも優勝で500ポイントです。予選免除で出場するのはそれぐらい難しい事なのですが、今日本人選手はこのATPランキング5/28日の時点で18位の錦織圭、58位の添田豪、68位の伊藤竜馬と100位以内に3人もの選手がランクインしています。

その中の一人、添田選手は2012年大注目のプレイヤーで、神奈川県出身の27歳。特にバックハンドが強力で世界のトップと渡り合っても引けを取らない攻めの姿勢はゲームをみていても熱くなります。選手としては小柄な178センチの彼の戦う姿勢は、どんなボールにもくらいつき攻め手を模索するクレバーなテニススタイルです。今年は下部トーナメントでもシングルスの優勝がいくつかあり、まだまだランキングは上がってきそうです。先日行われた全仏でもダブルス初勝利、ドイツでもパワーホースワールドカップという国別団体戦で、元世界ナンバーワンのロディックをストレートで破っています。

もう一人の注目選手、伊藤竜馬選手は三重県出身の24歳。錦織選手の1つ上の学年で高校生からプロとして活躍、今年は全豪オープンでも初戦突破しランキングを急上昇させている選手です。

その特徴はドラゴンショットと呼ばれる強烈なフォアハンド。軽く飛び上がるように打つそのフォアハンドは、突き刺すように早く、弾まない弾道で非常に取りにくいボールです。ボールをフラットに捉え、回転を余りかけずにパワーを載せてゆくフォアハンドは一見の価値あり!特に芝というサーフェスは早く、弾まないコートなので、伊藤選手には有利に働くはず。今年はこの若手日本人2人にも大注目ですよ。

■ATPランキング
http://www.atpworldtour.com/Rankings/Singles.aspx

■やはり本命はビッグ4か


今、テニスの世界でビッグ4と呼ばれる4人がいます。フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、そしてマレーです。4大大会をはじめ、大きな大会はほぼこの4選手が取ってしまうため、『4強』と『その他』という構図に、今ATPランキングはなっています。

その証拠に、先日の全仏オープンのベスト8には順当にこの4人は駒を進めてきました。ベスト4にもマレーの替わりに5位のフェレールが入っただけで、4人中3人が占めています。それほど、この4人は頭一つ抜けた存在になっており、大番狂わせが起きにくい状況にあります。

こんなことを言っては面白くないですが、今回もきっとこの4人の中から優勝者がでる事と思われます。しかし、この中で1人だけ大きな期待を背負っている選手がいます。その選手がイギリス出身の25歳、アンディ・マレーです。

イギリスで行われるウインブルドンですが、実はイギリス人の優勝者が長年でていません。特に男子シングルスでは1936年のフレッド・ペリーを最後に現れておらず、ウィンブルドン現象という言葉ができたほど。フレッド・ペリーってあのポロシャツで有名なフレッド・ペリーですよ。あの伝説の名プレーヤーです。その時代からずっと自国の競技、しかも自国開催で優勝できない。日本で例えると、大相撲で外国人ばかりが優勝している状況が80年近く続いていると考えると分かりやすいかもしれません。

コレって、ものすごくイギリス国民にしてみると悔しい事なのではないでしょうか?過去にも優勝できそうな選手、近年ではティム・ヘンマンというプレイヤーがおりましたが、彼を持ってしても数度の準優勝どまり。勝てそうで勝てない、そう言った事情もあり、ウインブルドン優勝はイギリス国民の悲願でもあるのです。

そんな国民の関心事を一手に引き受けるのが、マレー。長身から繰り出されるビッグサーブ、パワーのあるストローク、柔らかいタッチを見せるボレーなどをかなりのハイレベルで融合させたオールラウンドプレイヤーです。特に相手のウイニングショットを打ち返すようなカウンタープレイが強く、相手のプレーに合わせて変化させてゆく柔軟性が魅力です。今年はイギリス国民に遅い春はやってくるのでしょうか…

■アンディ・マレー公式サイト
http://www.andymurray.com/

 

■数字でみるウインブルドン

以前はビッグサーバーの主戦場と言えばウインブルドンでした。

古くは17歳で戴冠したボリス・ベッカー、サンダー・サーブで会場を騒然とさせたゴラン・イワニセビッチなどなど、ウインブルドンはサービスエースが取れる選手が多く勝利を手にしてきました。ただ、この状況は2002年から変わっているようです。

2001年、ゴラン・イワニセビッチが決勝で取ったサービスエースは38本ですが、2002年、レイトン・ヒューイットが決勝でナルバンディアンを破ったとき、サービスエースはたった7でした。なぜか、この年を期にフェデラー、ナダル、ヒューイットなどストロークプレイの強い選手が優勝できるようになっています。

理由は簡単で2001年の試合後、芝を耐久性のあるライムギに張り替えたそうです。張り替えた結果、プレイスタイルまで変えてしまったという不思議。2週間の大会中、綺麗なのは最初だけで、センターコートですら決勝は土の見えるコートでのタフな試合になります。2週間の大会中、なるべく芝がもつように運営側が考えた結果ですが、選手側にしてみるとコレは大きなレギュレーションチェンジ。多くのビッグサーバーがこの年を期に消えてゆきました。

とはいえ、芝のコートは相対的にみれば、ほかのコートよりも滑り、早いコートです。このコートセッティングを味方にできるようなプレイが今の王者に求められている資質と言えるでしょう。

2012年の開催期間は2012年6月25日から7月8日です。NHKでは深夜に中継もあるようなので、梅雨の夜長はウインブルドン観戦で過ごしてみるのもいいかもしれませんね!

■ウインブルドン公式サイト
http://www.wimbledon.com/en_GB/index.html

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