■村上海賊の娘にいたるまで

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先日、本屋大賞が発表されましたね。

ほとんどの方が名前だけでもどこかでお聞きになっている賞かと思いますが、全国書店員が選んだいちばん!売りたい本を選ぶという賞なんです。

もちろん本屋さんというのは本のプロですから、いい本、そうでない本たくさん読まれてきております。その目利きである本屋さんがこれはいいぞ!という本なのですから、ハズレがある訳がありません。

簡単に過去の受賞作あげてみると三浦しをんさんの『舟を編む』、東川篤哉さんの『謎解きはディナーのあとで』、冲方丁さんの『天地明察』、湊かなえさんの『告白』、伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』などなど…

どの受賞作も後にドラマ化、映画化がされているんです!今や直木賞や芥川賞より注目を浴びるこの賞は全国の書店員有志で組織する本屋大賞実行委員会が運営している賞で、前述の権威ある賞とは違い大物作家などの審査委員などがおらず、審査過程も明白で、とても透明性も高い賞となっています。

それだけ、多くの方に読まれ、おススメされてきたお話ですからノミネート作品が全て面白いというのもこの賞の特長で、本を読む人、読まない人にとっても『オススメできる本』の指標となってきました。

前置きが長くなりましたが、今年の受賞作は和田竜さんの『村上海賊の娘』です。お話は戦国時代、織田氏と毛利氏の水軍が大阪湾で激突した木津川口の戦いを舞台に、当時瀬戸内海を席巻した海賊王の娘・村上景(きょう)の活躍を描いた時代小説で、和田さんの長編はこれで4編目になります。

私も和田さんの大ファンで本屋大賞が発表された時、取るべくして取ったと本当に嬉しくなりました。そこで今回は受賞作家和田さんの過去の3作を含む珠玉の作品達ご紹介したいと思います。


■ご存知、映像化もされた『のぼうの城』

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埼玉県の行田市と鴻巣市にまたがる一帯に石田堤と言われる堤防のあとがあります。これは石田三成が当時この地区にあった成田氏が納める、周囲を湖に囲まれ、浮城とも呼ばれる忍(おし)城を水攻めにするために築いた水止めの遺跡。

時はさかのぼること戦国時代、天下統一目前の豊臣秀吉は唯一残された敵、北条勢を攻めようとしていた。周囲を湖で囲まれた「浮き城」の異名をもつ「忍城」もその一つ。

その忍城では、その不思議な人柄から農民たちから“のぼう様(でくのぼうの意)”と呼ばれる、成田長親が城を治める事に。迫りくる天下軍に緊迫する仲間たちを前に、長親は 「北条にも、豊臣にもつかず、皆で今までと同じように暮らせないかなあ~」と呑気なことを言うような城主。

時は刻々と戦渦の度合を強め、天下軍を指揮する石田三成は忍城に降伏を迫る。しかし多勢に無勢、と三成軍のなめきった態度に、長親が思いもよらない言葉を発する。「戦いまする」そして、誰の目にも絶対不利な、たった500 人の軍勢対2万の大軍の戦いの火ぶたが切って落とされる。

…と言った内容の作品なんですが、映画化もされ、さらにはマンガ化までされのべ200万部の大ヒット作となりました。和田竜さんといえば、このお話と言ったお顔となる時代小説ですね。大ヒット作となったこのお話は実は『忍ぶの城』という題名のシナリオで最初は発表されていました。

まさに忍(おし)城のことなのですが、映像化にあたり小説にリファインされて大ヒット。私も最初読んだ時には前半部分は重たくて(歴史物は背景を時代背景を記述しなくてはならないので、そうなりがちです)、なかなか読み進まなかったのですが後々の作品はとても読みやすく洗練されています。

 ■忍者とは?がよくわかる『忍びの国』

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みなさんは忍者というとどんなものを想像されますか?

煙玉から飛び出す、ガマガエルのお化けでしょうか?颯爽と風呂敷で空を飛ぶ姿でしょうか?やはりそれは後々のマンガの影響がとても大きいと思いますが、ここでは等身大の忍者の姿が描かれており、とても興味深い作品です。忍者とは読んで字のごとく『しのぶもの』。普段は農民に化けてというか、普段は農業にいそしむ農民そのものです。そう、普段は隠れてすごしているので忍者は表に出ないんですね。

ただ、ひとたび戦争となるとその村に伝わる特殊な戦法(火気の扱いやかく乱を得意とした情報戦)を使って、金品で雇われた勢力に加担するいわば、今で言うところの傭兵家業なんですね。また城下町に悪い噂を流したり情報戦にも長けており、インテリジェンスとしての活躍も忍者の仕事です。諜報員、つまりスパイでもあるんです。

まとめると忍者とはスパイ+傭兵、しかも伊賀という村全体がそうですから、全員スパイ集団という厄介な存在なわけです。各地の戦況にも詳しいわけですから状勢に寄って寝返ることも珍しくなく、なかなか手元に置いて重用するのも難しかったでしょう。この時代うまくこの勢力を使ったのが織田信長です。さすがですね!

話が小説の内容からそれてしまいましたが、この忍びの国の舞台はそんな織田信長を父にもつダメ息子織田信雄の“忍びの国”伊賀攻めのお話。主人公は責められる側の伊賀の忍びの無門。伊賀一の腕を誇るのですが、無類の怠け者。女房のお国に稼ぎのなさを咎められ、百文の褒美目当てに他家の伊賀者を殺めるが…これを機に身辺が一変します。

時代は戦国、怠け者の無門も伊賀攻略を狙う織田信雄軍と百地三太夫率いる伊賀忍び軍団との、壮絶な戦いに巻き込まれてゆきます。

フィクションとしての忍者活劇の面白さもさることながらしっかりとした時代考証と、忍者の素の描かれかたが合わさって史実にもこんなことがあったのかもなぁと、遠い過去に思いを馳せる良い時間をくれることとと思います。

表舞台には決して登場しない忍者がいまでも海を越えて愛される理由がわかるような気がします。無門とお国のラブストーリーも必見!是非女性にも読んでもらいたい一冊です。

■戦国時代のスナイパーを描く『小太郎の左腕 』

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時は一五五六年。戦国の大名がいまだ未成熟の時代。勢力図を拡大し続ける戸沢家、児玉家の両雄は、もはや開戦を避けられない状態にあった。鉄砲が伝来してから時わずかな時代、織田信長が鉄砲衆で天下統一を手中にする少し前のころ、戸沢家の重臣である林半右衛門は、敵対する児玉家との戦の中で猛将・花房喜兵衛の槍を受ける。深手を負った半右衛門を山中で出会った猟師が介抱するが、そこで出会った猟師の孫が小太郎という名の少年であった。

ひと月後、児玉家との戦を前に大規模な鉄砲試合が開催された。武士と農民の区別なく参加できるこの大会に、小太郎が姿を見せる。半右衛門を助けた折に礼と して、出場させてもらう約束をしていたのである。通常の鉄砲では取るに足らない結果に終わった小太郎だが、執拗に制止する祖父・要蔵に違和感を覚えた半右衛門はふと、左構えの鉄砲を与えてみる。するとそこで小太郎は、驚くべき才能を発揮したのであった。

漁師が鉄砲を使うこと自体が珍しい時代に、山奥で出会う漁師とは歴史ファンには溜まらない設定、そう雑賀衆なんですよね。雑賀衆とは和歌山県の一部、当時紀伊国とよばれていた地方の一揆集団で、16世紀では珍しい鉄砲で武装した火器武装集団で、その軍事力を背景に貿易や傭兵なども行っておりました。

小太郎はその雑賀衆の少年。傭兵ですからその出自を表に出すことなく(この設定も忍者っぽいですね)しかも天賦の才がありながら左利き。そもそも鉄砲自体が高価な時代に左利きあつらえの銃を手に入れることが難しい。のちに左利きの銃を手に入れた小太郎の活躍は鳥肌が立ちます。

天才スナイパーにして出自が謎の少年、それを取り巻く侍達のやり取り。設定だけでもワクワクします。戦国の世にあって、出会うものと対峙しなければ行きてゆけない場面や、命を賭して家というプライドを守ってゆく侍達の姿。

隠れて生きる傭兵の雑賀衆と、家というプライドを背負う武士の全く異なる生き様が交錯するその刹那、弾丸が打ち抜く未来とは。息をつかせぬ展開に興奮あり、涙ありと男の生き様を描く時代小説。オススメの一冊です。

 

今週は本屋大賞を受賞された和田竜さんの作品をご紹介致しました。本当に才能のある作家さんなので、これからも心躍る作品をたくさん世に出してほしいと思います。もし読んだことにないものがありましたら書店にて一度手に取ってみてはいかがでしょうか?

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